コラム
2021年8月27日
表現すること
「57×72×7(㎝)の箱、その中に砂、これが箱庭療法と呼ばれる心理方の器である。
ここに子ども達(子どもと限らない)は、人、動物、乗物、構築物、石等の様々な玩具を用い、砂を掘ったり、盛ったりして動かし、自分の心の世界を表現していく(されていく)。
人は何らかの形で自己表現しなくては生きられない生き物だと思う。
しゃべること動くことを禁止や否定、制限等の阻害されることが長く続くと、多くは不調に陥る。
更には病状として表れてくることがある。
また、言葉でうまく表現できない子ども(大人)にも、様々な思いや意識化できない心の世界はある。
この人間の心の真理に目を向け、目に見える形の表現方法として考えられたひとつに箱庭療法がある。
では、箱庭でどう表現されていくのか。
例えばA君、砂箱の前に立ち、まず砂を触ってみる。次いで砂を掘る。(箱の底面は青く塗ってあり、海、川、池等見立てることができる)。
あるいは砂を盛る。(山や丘等になる。)
そして玩具棚の前に行き、一つのが玩具を手にとると箱の前に戻り、自分の最も良しとする位置におく。
その後も玩具はためらいなく、あるいは思案、しゅん巡しつつ置かれていく。
彼は一心に自分の世界を作っていく。よい表情である。この時、おそらく彼の心は誰にも邪魔されることなく存分に開放されている。
私は、この心の自由が、彼の世界創造が保障されるべく見守る。数十分後「できた」と彼は満足げに告げる。
彼の今現在の世界の完成である。どうですか、一度箱庭作ってみませんか。 (永口)