発達特性をお持ちのお子さまへの
三重県松阪市にある発達支援専門の施設

お知らせ・コラム

コラム
2023年8月29日

「今月の花に想う」

今月の生け花は、青い球状のアザミと朱色のガーベラと緑のタニワタリで活けることになりました。色の配置や丈(長さ)を見ながら、花が付いていないタニワタリの葉をどのように使って、作品として仕上げるのかが勘所(かんどころ)。

療育に通って下さるお嬢さんたちは、実に伸びやかに活けていただけるので、毎回嬉しい心持ちで見守ってまいりました。今回は、お手本としまして、タニワタリを自由な発想で使えるように、交差させてみました。そうしますと、前後の空間ができて、間(はざま)にアザミやガーベラの花が具合よく納まりました。利用者の方々も、意識されて、前後の広がりのある作品に仕上げていただきました。以心伝心(いしんでんしん)で、安心いたしました。

さて、生け花の素材には、花の咲かない葉や枝を採り入れる場合があります。タニワタリもそうした中のひとつです。温かい湿った森の木や岩に着生するシダの仲間で、三重県の紀北町の大島が自生地の北限になっているそうです。大きくて長い葉の裏側には黒い筋状に胞子(ほうし)がついています。葉の表側からも模様のように透けて見えます。

剣山(けんざん)に立てますと、なんともゆかしい佇(たたず)まいで、他の花を際立(きわだ)たせる名脇役(めいわきやく)です。

一方、同じように花をつけない枝物(えだもの)でも、若松は1月の主役で、いつまでも若々しい常(とこ)若(わか)の象徴として、お正月には欠かせません。さしずめ役どころは、すくっと舞台の中央に立つ美男子でしょうか。花もいろいろ、役もいろいろ。

長年花を活けていても、まっさらな気持ちで花に向かうと、また新しい学びが得られて、活力が湧いてきます。花を活かして、自分も生きる。まだまだ生け花の楽しさは尽きません。