発達特性をお持ちのお子さまへの
三重県松阪市にある発達支援専門の施設

お知らせ・コラム

コラム
2023年11月2日

箱庭の不思議、心の不思議

この前「箱庭」が個人の表現方法のひとつであるという話を綴らせてもらいましたが、具体的にイメージしていただくことは難しかったのではと思い、今回は具体例をとりあげようと思います。前回どういうものを使って行うかは記させてもらいましたが、簡単に言えば、砂の入った箱と様々なミニチュア玩具を使います。

例えばAさん(大人)。砂箱の前に立って、しばらくじっと砂を見つめています。さて何を作ろうか、Aさんの中に一つのイメージが浮かんできました。好きな山野のイメージです。そこでまず、そのイメージを砂で形にしていきます。すると新たなイメージが引き寄せられるように出てきて、木々、花々、草、流れる川、川を横切って続いていく道、川にかかる橋を渡って歩いていく人々というように、砂を動かし、玩具を配置し形にしていきます。一つの世界の完成です。作り終えた後の感覚は様々ですが、ほとんどは心地良いものです。充足感、清涼感、穏やかさ、温かさ等々。

さて、Aさんの次作はどんなものになると思いますか? その人の状況、状態、心境等によって異なりますが、Aさんの場合、一転、砂箱の中央を円形に砂を除いて水域を作り、そこに一隻の小さな船を浮かべて終了。第三者が見れば何か寂しく孤独な印象を受ける箱庭です。もっといろいろ玩具を置けばとも考えられる作品です。ところがそれ以上手が加えられないのです。心が許さないといったらいいでしょうか、箱庭の不思議のひとつです。また箱庭は、一つとして同じ表現はできません。人によっては同じような表現が続く場合がありますが、全く同じものはできません。

今回、箱庭表現の入り口は一つのイメージでしたが、イメージではなく目にとまった一つの玩具が入り口になる場合もあり様々です。ただどのような入り口から入ろうと、表現していく過程では、その人の今の心の在り様に背くものは一つとして置かれない、形にされないということです。これも箱庭表現の不思議であり魅力でもあると思っています。